第533回土曜健康科学セミナーレポート
7月22日(土)13時半から健康ライフプラザ5階で、第533回土曜健康科学セミナーを開催いたしました。
今回のテーマは、「21世紀の保健課題-グローバル化する感染症に対する保健システムの構築に向けて」です。
講師は、WHO健康開発総合研究センター テクニカルオフィサー 茅野 龍馬先生です。
WHOは国連のシステムにおいて、国際保健の調整と統括をおこなう最高機関です。WHOの専門家は、保健に関するガイドラインや標準、指標等をつくり、公衆衛生に関して広く世界の国々をサポートしています。
HAT神戸にある「WHO健康開発総合研究センター」は、世界で唯一のWHOの研究センターで、UHC(世界中の誰もが、人々が必要とする質の高い保健医療サービスを受けられることを意味する)、高齢化、健康危機管理を研究テーマにしています。
20世紀は、伝統的感染症との闘いが大きなテーマでした。そして、実際に、マラリアやエイズ、結核、熱帯病対策など、世界の公衆衛生上大きな成果をあげてきました。
21世紀は、グローバル化と都市化がもたらす新たな課題が保健課題となっています。
新型インフルエンザ、SARS、MERS、エボラ出血熱などの感染症を、絶え間なく人や物が移動する社会において、水際で止めることは困難になっています。そのためには、国家の枠組みを超え、一貫した対応を連携して行うためのルール作りが必要です。
発展途上国でも、都市に人口が集中する都市化が進み、経済格差による健康格差が深刻な問題になってきています。無計画で無秩序な都市化が、「病気になる環境を無視し、病気を治して、また劣悪な環境に戻す」という問題を生じさせています。
これらの問題は、他人事と考えずに、ひとりひとりが国際保健の当事者であることを自覚して、「自分ごと」として関わることが、未来の課題解決につながります。
そして、全ての関係者が日頃から情報交換をし、協力しあうことが、健康危機管理の根幹を支えると考えます。
普段の病気の予防や治療の話しとは違った内容だったので、参加された方々もいろいろと考えながら聴いていただけたようで、質問もたくさんいただきました。
次回は、8月5日(土)13時半から開催いたします。テーマは、「ロコモと闘うための赤筋と生活スタイル」、講師は神戸大学大学院保健学研究科 運動機能障害学分野教授 藤野 英已氏です。