第556回土曜健康科学セミナーレポート | 兵庫県予防医学協会のブログ

第556回土曜健康科学セミナーレポート

第556回土曜健康科学セミナーを、10月13日(土)13時半から健康ライフプラザ5階で開催いたしました。
今回は、「みんなで認知症対策」と題し、くじめ内科(神戸市長田区)院長で認知症サポート医の久次米 健市先生にご講演いただきました。

認知症は、誰でもなる可能性のある病気。いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害があるために社会生活に支障をきたすようになった状態を言う。社会生活支障がないもの忘れは認知症ではない。根本的治療薬はまだないので、早期発見・早期対応が原則。
認知症で大切なのは治る認知症を見逃さないこと。治る認知症の代表的なものは、正常圧水頭症(脳の内側や脊髄の周囲を満たしている髄液が過剰に溜まって脳室が拡大し、脳を外側へと圧迫する病気)、慢性硬膜下血腫(高齢者では、棚に頭をぶつけるなどごく軽微な打撲に起因することもあり、頭を打って2~3ヶ月して起こることもある)などがある。
軽度認知障害(MCI)とは、健常者と認知症の中間の段階を指す。日常生活に支障はないが、約5年でその半数以上が認知症に進行する。認知症予備軍とも言われるMCIだが、最近の研究ではMCIの段階で適切な予防や治療を行えば、認知症の発症を防ぐことや遅らせることができる。そのためにも、なんとなく気になる場合は、「年のせい」にせずに早めの受診を。

「認知症」と「もの忘れ」の違い
「老化によるもの忘れ」は、体験の一部分を忘れる、ヒントを与えられると思い出せる、時間や場所など見当がつく、日常生活に支障はない、もの忘れに対して自覚がある
「認知症のもの忘れ」は、体験全体を忘れる、新しい出来事を記憶できない、ヒントがあっても思い出せない、時間や場所などがわからない、日常生活に支障がある、もの忘れの自覚が乏しい

認知症の人と接するときの心がまえ(対応の7つのポイント)
1.否定しない
2.いやがることをさせない
3.多くの事を言わない
4.後ろから声をかけない
5.相手に見えるように、やさしく話す
6.ゆっくり、はっきり大きな声で話す
7.相手の言葉をよく聞く、自分もあわてず対応

これまでは、認知症の症状が悪化し、行動・心理症状等が生じてから、医療機関を受診している例が多く、また、医療・ケアは、認知症の人に「危機」が生じてからの「事後的な対応」が主眼となっていた。これに対し、今後目指すべきケアは、「早期支援機能」と「危機回避支援機能」で、「危機」の発生を防ぐ「早期・事前的な対応」が必要。そのためには、認知症は誰でもなる可能性のある病気と理解し、他人事でなく自分事として捉え、地域で支えるようにしなければならない。
久次米先生のご講演前に少しお時間をいただいて、兵庫県予防医学協会で行っている「もの忘れリスク健診」のご案内とこれまでのデータなどを保健師からご説明させていただきました。
次回は、11月24日(土)13時半から開催いたします。テーマは、「あなたの体をよく知ろう-健診の上手な使い方」、講師は東京医科歯科大学名誉教授で、兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ健診センター参与の平田 結喜緒氏です。

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