第565回土曜健康科学セミナーレポート
7月13日(土)13時半から健康ライフプラザ5階で、第565回KOBE健康くらぶ土曜健康科学セミナーを開催いたしました。
今回のテーマは、「がんで死なないために-効果的ながん検診の受け方-」、講師は国立がん研究センター中央病院 放射線診断科科長 楠本 昌彦先生です。
2人に1人はがんになる時代。症状がない時期にがん検診を受け、より早期に発見することが重要なのは明らかである。
しかし、「毎年がん検診を受けていれば早期で見つかるし、がんで死ぬことはない」「検診で『異常なし』だったから、私はがんではない。次回の検診までは大丈夫」は正しくない。がん検診を正しく定期的に受診することで、がんで死亡することを減らしたり、先延ばしにできる効果は期待できる。しかし、「検診を受ければ死亡する人が少なくなる」ということは「死亡する人がなくなる」ということではない。
がんは一般的に、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期と進行度を分類する。Ⅰ期は早期でⅣ期は転移などが起こっている進行期である。しかし、すべてのがんはⅠ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ期と進行するわけではない。進行がゆっくりのがんもあれば、Ⅱ→Ⅳ期のようにわずかの期間に急激に進行してしまうこともある。喫煙歴がある肺がんの人に、こうした状態が見られる。早期診断が難しく、Ⅲ期やⅣ期にならないと臨床的かつ病理学的に診断できないがんもあり、いきなりⅣ期と診断される場合もある。がん検診にも限界があると正しく認識してほしい。
がんと診断されたら、状況を把握し、治療方法を決める。がんの治療は、「標準療法」を行う。標準療法は、科学的根拠に基づき推奨される治療であり、個人の状態に合わせ、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)、免疫療法、緩和ケアなどの治療方法を選ぶ。インターネットなどを見ると、標準という単語に対比して、特別な治療や最新の治療など魅力的な言葉の高額な治療が氾濫しているが、標準療法の意味を正しく理解し、治療法を選択すること。
がん検診による早期発見、治療方法の進歩により、5年生存率は伸び、種類によっては治るがんも増えている。がん検診のメリット・デメリットを正しく認識したうえで、受診することが大切である。
次回は、8月17日(土)13時半から開催いたします。テーマは、「ストレスと心血管病-心臓病・脳卒中から身を守る術-」、講師は神戸労災病院 副院長・循環器内科部長 井上 信孝氏です。