検査内容の説明
身体計測
身長、体重、腹囲、BMI、推定体脂肪率により、現在の体格が適正か推測します。
BMI(体格指数)
BMI は身長に見合った体重かどうかを判定する数値です。
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出します。
推定体脂肪率(生体電気インピーダンス法)
体内に微弱な電流を流して電気抵抗を測定し、脂肪の割合を推定したもので、肥満を判定する目安にします。
推定体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100という式で算出します。
推定体脂肪率 | 基準値 |
---|---|
男性 | 20%以下 |
女性 | 30%以下 |
腹囲
腹囲は、男性85㎝以上、女性90㎝以上のときに内臓脂肪型肥満が疑われます。
筋肉の内側の腹腔内に脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の人は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを発生する確率が高くなります。
聴力
聴力(オージオ法)
低音と高音の両者が聞こえるかを調べます。
1000Hz の低音域、4000Hz の高音域ともに 30dB(dBデシベル:音の大きさ)以下の音が聞こえれば正常です。
それ以上でないと聞こえないときは、難聴が疑われます。
眼科
視力(遠方、近方)
遠方視力は5mの距離、近方視力は30cmの距離の視力です。 眼の病気がないのに裸眼視力が 0.7 未満のときは近視・乱視などが考えられます。
眼圧
眼球の中は房水という液体で、眼球内の圧力が一定に保たれています。これを眼圧といいます。
眼圧が高いときは、緑内障などが疑われますので眼科の受診をお勧めします。
眼底
瞳孔の奥にある眼底を撮影して、眼底の血管、網膜や視神経等を観察します。健康診断では目の病気以外に動脈硬化、高血圧、糖尿病による血管変化の程度を評価します。異常を指摘されたときは、眼科を受診して、精密な眼底検査をお勧めします。
循環器
血圧 最高(収縮期)、最低(拡張期)
最高血圧(140mmHg以上)、最低血圧(90mmHg以上)のどちらかが高くても高血圧となります。血圧の高い状態(高血圧)が続くと、脳や心臓などの血管が傷み、硬くなり(動脈硬化)、脳卒中や心筋梗塞などさまざまな病気につながります。
心電図
心臓の電気的な活動の様子をグラフの形に記録する検査です。不整脈や心筋に異常があるかなどを調べます。
異常があるときは心臓疾患が疑われますので、循環器内科を受診してください。
脂質
総コレステロール
血液中のコレステロールの総量を調べます。値が高い場合は、脂質代謝異常、動脈硬化、甲状腺機能低下などが疑われます。
中性脂肪
体の中でもっとも多い脂肪で、主に糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。値が高いと動脈硬化を進行させます。
HDLコレステロール
血液中の悪玉コレステロールを回収するため、善玉コレステロールと呼ばれるものです。HDLコレステロールが少ないと、動脈硬化の危険性が高くなります。
LDLコレステロール
悪玉コレステロールとよばれるものです。
LDL コレステロールが多すぎると、血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性を高めます。
non-HDLコレステロール
non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDL(善玉)コレステロールを引いたものです。血液中にはLDL(悪玉)コレステロールとは別の悪玉がひそんでおり、それらを含めた全ての悪玉の量をあらわすのが、non-HDLコレステロールです。
中性脂肪が高値の時に動脈硬化のリスクを総合的に管理できる指標です。
糖代謝
尿糖定性
尿中の糖分を調べる検査です。
血液中のブドウ糖濃度がある値(おおよそで160~180mg/dL)を超えると、腎臓で再吸収しきれなくなり尿中にブドウ糖が漏れ出てきます。
糖尿病、甲状腺機能亢進症や腎性糖尿などで陽性となります。血液検査で病気の有無を確かめる必要があります。
血糖
血液中のブドウ糖の量を調べます。食事をした後は値が高くなるので、空腹時に採血します。空腹時の値が高い場合は、糖尿病(Ⅰ型、Ⅱ型)や、他の原因で起こる二次性糖尿病が疑われます。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワン・シー)
過去1~2 ヶ月の血糖の平均的な状態を反映するため、糖尿病の検査直前の食事に影響されません。血糖コントロールの状態がわかります。
空腹時血糖が126mg/dL 以上、HbA1c 6.5%以上なら糖尿病と診断されます。
尿酸
尿酸は、プリン体という物質が代謝されたときに生じる老廃物です。尿酸の産生が増加したり、尿中の排泄が低下したりすると、血液中の値が上昇します。値が高いときは、痛風、腎臓疾患、血液疾患などが疑われます。値が高い状態(高尿酸血症)が続くと結晶として関節にたまり痛風発作を起こします。
肝胆膵
AST(GOT)、ALT(GPT)
ASTは、心臓、筋肉、肝臓に多く存在する酵素です。ALTは肝臓に多く存在する酵素です。
ASTやALTの値が高いときは、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎などが疑われます。
γ-GTP
γ-GTP は、肝臓や胆道に異常があると血液中の値が上昇します。 値が高いときは、アルコール性肝障害、慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害などが疑われます。
ALP
肝臓、腎臓、骨、副腎などの臓器に広く分布する酵素です。値が高いときは、肝臓・胆道疾患、骨疾患などが疑われます。
LD
肝臓をはじめ腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などに含まれている酵素です。値が高いときは、肝臓疾患、心疾患などが疑われます。
総ビリルビン
ヘモグロビンの代謝産物で、胆汁色素の主成分です。値が高いときは、黄疸が出ることがあり肝臓・胆道疾患などが疑われます。
血清総蛋白
血清中の80種類以上の蛋白の総量を調べます。その主なものはアルブミン(約60%)とグロブリン(約20%)が占めています。
アルブミン
血液中の蛋白の主成分で、肝臓で合成されます。値が低いときは、肝疾患、ネフローゼ、低栄養状態などが疑われます。
A/G比
アルブミン(A)とグロブリン(G)の比です。値が低いときは、アルブミンやグロブリンの異常がある疾患が疑われます。
CHE(コリンエステラーゼ)
肝臓で合成されている酵素の一つです。値が低いときは肝疾患、高いときは脂肪肝、ネフローゼ、甲状腺疾患などが疑われます。
アミラーゼ
膵臓や唾液腺で作られる消化酵素の一つです。値が高いときは、膵炎や膵がん、耳下腺炎などが疑われます。
HBs抗原精密
現在B型肝炎ウィルスに感染しているかどうか調べます。(+)のときは、肝炎、無症候性キャリアが疑われます。
HBs抗体精密、HBs抗体定性
B型肝炎ウィルスが体内に入ったときにできる抗体が血液中にあるかを調べます。
(精密)抗体の量を測定します。
(定性)陰性または陽性を判定します。
HCV抗体
C型肝炎ウィルスが体内に入ったときにできる抗体が血液中にあるかどうかを調べます。値が高いときは、HCV核酸増幅法などによって、現在ウィルスが体内に存在しているかを調べる必要があります。
腎・尿路
尿蛋白定性
腎臓には血液中の老廃物やいらないものだけを尿中に排泄する機能があります。
しかし腎機能が低下すると血液中の蛋白が腎臓からもれ出てきます。陽性の場合、腎炎、ネフローゼ、糖尿病性腎症など腎臓疾患が疑われます。
尿潜血定性
尿中に含まれる血液(赤血球)を検出するものです。陽性の場合、腎・尿路系の出血が疑われます。
尿素窒素
体内で使用された蛋白質の老廃物で、腎臓から尿中に排出されます。値が高いと、腎臓の機能低下などが疑われます。
クレアチニン
筋肉にあるクレアチンが代謝されたあとの老廃物で、腎臓でろ過されて尿中に排出されます。値が高いと、腎臓の機能が低下していることを意味します。
eGFR
腎臓の老廃物を尿に排泄する能力の指標です。血清のクレアチニン値を性別、年齢で補正して算出します。値が低いほど腎臓の機能が低下していることを意味します。
尿pH
尿の酸性、アルカリ性の状態をみます。食事や運動によっても変化します。
尿比重
腎臓での尿の濃縮・希釈能の状態をみます。腎機能以外に脱水や運動などでも影響されます。
尿沈渣
尿に含まれる赤血球、白血球などの細胞や結晶、細菌などを顕微鏡で調べます。
異常があるときは、腎・尿路系の疾患が疑われます。
貧血
赤血球数
赤血球は肺で取り入れた酸素を全身に運ぶ役目を担っています。 赤血球の数が多すぎれば多血症、少なすぎれば貧血が疑われます。
血色素量
血色素とは赤血球に含まれるヘムたんぱく質で、酸素の運搬役を果たします。
血色素量が減少していれば、貧血が疑われます。
ヘマトクリット値
血液全体に占める赤血球の割合をヘマトクリット値といいます。 値が低ければ貧血が疑われ、高ければ多血症、脱水などが疑われます。
白血球数
白血球は細菌などから体を守る働きをしています。
値が高いときは、細菌感染症や炎症、腫瘍などの存在が疑われます。低いときは、ウィルス感染症、薬物アレルギー、再生不良性貧血などが疑われます。
MCV
MCV は赤血球の体積を表します。
値が高いと、ビタミンB12 欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血などが疑われます。低いと、鉄欠乏性貧血、慢性炎症にともなう貧血などが疑われます。
MCH
赤血球に含まれる血色素量を表します。
MCHC
赤血球体積に対する血色素量の割合を示します。
血小板数
血小板は出血を止める重要な役割を果たしています。値が高いときは本態性血小板血症、反応性血小板増多症、鉄欠乏性貧血などが疑われ、低いときは再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、肝硬変などが疑われます。
血液像
Ne(好中球)・Eo(好酸球)・Ba(好塩基球)
Ly(リンパ球)・Mo(単球)
白血球は5種類の分画に分かれます。各分画の増減により、種々の疾患の診断の手がかりになります。
腫瘍マーカーなど
体内にがんができると、血液や尿の中に、健康なときにはほとんどみられない物質が出現することがあります。それらの物質を「腫瘍マーカー」とよびます。腫瘍マーカーの濃度を測定することで、がんの有無やがんがある場所を推測することができます。しかし、数値が高いからといって必ずしもがんがあると確定するわけではありません。腫瘍マーカーの値は、がん以外の病気でも上昇することがあり、喫煙や服用している薬なども数値に影響することがあります。また、がんがあっても、腫瘍マーカーの数値が上昇しないこともあります。したがって、腫瘍マーカーは、がんの早期診断法ではありません。
あくまで、がん診断の補助的な検査法です。
CEA
大腸がんや胃がんなどの消化器系のがん、肺がんなどで上昇します。肝機能障害や長期喫煙者、高齢者においても上昇することがあります。
PSA
前立腺がんで数値が上昇します。前立腺肥大や前立腺炎でも上昇することがあります。
CA19-9
消化器系のがん、なかでも膵臓がん、胆のうがん、胆管がんなどで数値が上昇します。また、卵巣がんなど婦人科系のがんでも上昇します。膵炎、胆のう炎、胆管炎などでも上昇することがあります。
CA125
卵巣がんや子宮体がんなどで数値が上昇します。子宮内膜症、腹膜炎、月経、妊娠などでも上昇することがあります。
CA15-3
乳がん、なかでも転移性乳がん、進行乳がんで数値が上昇します。他のがん(卵巣がんなど)や、子宮筋腫、子宮内膜症、肝機能障害などでも上昇することがあります。
シフラ(CYFRA)
肺がん(特に扁平上皮がん)で数値が上昇します。他のがん(食道がん、子宮頸がんなど)や肺の良性疾患でも上昇することがあります。
SCC抗原
各種扁平上皮がん(肺がん、食道がん、子宮頸がん、皮膚がんなど)で数値が上昇します。皮膚や肺の炎症性疾患などでも上昇することがあります。
AFP定量(αフェトプロテイン)
肝細胞がん、胚細胞がん(精巣、卵巣などにできます)などで数値が上昇します。肝硬変、肝炎、妊娠などでも上昇することがあります。
PIVKA-2
肝細胞がんで数値が上昇します。肝硬変や胆汁うっ滞、ワーファリンなどの薬を服用している場合でも上昇します。
NT-proBNP
心臓から分泌されるホルモンで、心臓機能が低下して、心臓の負担が大きくなるほど値が高くなります。心不全の早期発見や重度の判定に役立ちます。
その他血液
CPK
骨格筋や心筋に多く含まれ、筋炎、心筋梗塞などの筋肉の障害で値が高くなります。激しい運動の後も値が高くなるので注意が必要です。
CRP定量
体内に炎症があるときに、血清中に増える蛋白質の一種です。値が高いときは、感染症、膠原病、炎症性疾患などが疑われます。
RPR定性・TP抗体定性
梅毒に感染しているかを調べます。
(+)判定であっても偽陽性反応(病気がなくても検査結果が異常になる)による場合があり、他の所見と組み合わせて診断する必要があります。
診察
理学所見
医師による視診、触診、聴打診などによる診察内容です。
呼吸器
胸部X線
肺結核や肺がん、肺炎などの呼吸器疾患を調べます。 胸部全体を撮影するので、肺だけでなく心臓や血管影、脊柱側弯などのチェックもしています。肺の異常が疑われる場合は呼吸器内科を受診してください。
呼吸機能
- 努力肺活量
- 胸いっぱいに吸い込んだ空気を一気に吐き出した時の空気の量。
- %肺活量
- 年齢、性別、身長から算出された予測肺活量に対する実際の肺活量の割合。
基準値は80%以上です。値が低いときは、間質性肺炎や肺線維症などが疑われます。 - 1秒量
- 努力肺活量のうち、最初の1秒間に吐き出した空気の量。
- 1秒率
- 1秒量が努力肺活量に占める割合。
基準値は70%以上です。値が低いときは慢性気管支炎、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息が疑われます。
消化器
上部消化管画像検査
食道・胃・十二指腸の状態を見て、潰瘍、ポリープ、がんなどの消化器疾患を調べます。
バリウムを用いた胃部X線検査と内視鏡を用いた内視鏡検査があります。
胃部X線検査では、胃の形状などの全体像と粘膜の状態を画像診断します。
内視鏡検査では消化管粘膜の状態を直接観察します。異常がある時は消化器内科を受診してください。
ペプシノゲンⅠ・ペプシゲンⅡ・ペプシノゲンⅠ/Ⅱ
血清ペプシノゲンは胃粘膜の萎縮を反映して低下するため、胃がんの原因となる萎縮性胃炎を発見する目的で行われます。
血中Hピロリ抗体
胃がんの主な発症原因菌であるヘリコバクターピロリ(Hピロリ)に感染した際にできる抗体が血液中にあるかを調べます。
便中Hピロリ抗原
ヘリコバクターピロリによる感染が続いている場合は陽性になります。
陽性のときは、消化器内科を受診し、除菌治療を受けることをお勧めします。
便潜血
陽性のときは大腸のポリープやがんなどが疑われますので、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要です。消化器内科を受診してください。
腹部超音波
肝臓、胆のう、腎臓、膵臓、脾臓、腹部大動脈を観察します。腫瘤、結石、脂肪肝などの有無を調べます。
乳房
マンモグラフィ
マンモグラフィは早期がんの重要なサインである石灰化(カルシウム沈着)を写し出すのに優れています。
超音波
超音波検査はX線被ばくがなく、乳腺の状態を観察し、手に触れない小さなしこりを見つけることができます。
子宮
婦人科内診
外陰部やおりものの異常、ポリープの有無、子宮や卵巣の腫れ、癒着が無いかを調べます。
子宮頸がん細胞診
子宮頸部の細胞を採取して顕微鏡で調べ「ベセスダ分類」(下覧参照) を用いて異常の程度を細かく分類します。
子宮頸がん細胞診 ベセスダ分類の一覧
判定 | 意味 |
---|---|
NILM | 「正常な細胞のみ」の意味で、健康維持のため定期的な検診をお勧めします。 |
ASC-US | 「軽度扁平上皮内病変疑い」の意味です。婦人科でHPV検査あるいは再検査を受けてください。 |
ASC-H | 「高度扁平上皮内病変疑い」の意味です。 |
LSIL | 「軽度扁平上皮内病変」の略語です。 |
HSIL | 「高度扁平上皮内病変」の略語です。 |
SCC | 「扁平上皮がんと考えられる細胞を認める」の意味です。 |
AGC | 「腺細胞系に悪性を疑う細胞を認める」の意味です。 |
AIS | 「腺細胞系に悪性の可能性が高い細胞を認める」の意味です。 |
Adeno- carcinoma |
「腺細胞系に悪性と考えられる細胞を認める」の意味です。 |
Other malig | 「悪性と考えられる細胞を認める」の意味です。 |
HPV(ヒトパピローマウイルス)
子宮頸がんは、HPVの感染が主原因です。HPVに感染していれば「陽性」、していなければ「陰性」となります。
骨粗しょう症検診
骨密度を測定します。骨密度とは骨に含まれるミネラル(カルシウム他)の量です。
骨密度が減少すると骨折のリスクが高まります。「骨粗鬆症疑い」の判定となったときは、整形外科を受診してください。
また、骨密度は経年観察が大切です。骨粗しょう症検診を継続して利用することをおすすめします。
DXA法
DXA法は骨密度を測定する最も標準的な検査方法です。転倒などで骨折しやすい部位である大腿骨頸部もしくは腰椎で検査をします。微量なX線をあてて、正確な骨密度を測定します。