脊柱側わん症検診

脊柱側わん症検診

脊柱側わん症

正常例
側わん症例

財団法人予防医学事業中央会発行
HEALTH CARE No51より転載

 

脊柱側わん症検診について

兵庫県の脊柱側わん症学校検診の歴史

兵庫県の脊柱側わん症学校検診は、神戸大学医学部整形外科学教室および兵庫県立のじぎく療育センターをはじめとする神戸大学関連病院の協力で昭和54年より開始されました。この事業には当初より兵庫県予防医学協会が関与しております。これは昭和53年4月の学校保健法の改正に伴うものであります。そして後には兵庫医科大学整形外科学教室も加わり、神戸市、阪神間諸都市を中心に北部を除く兵庫県一円における小学校5、6年生と中学生1、2年生の児童生徒を対象として、現在まで広く実施されています。

 

脊柱側わん症判定区分

管理区分 診断 わん曲度
A 要治療 脊柱側わん症(中等度以上) コブ角25度以上
構築性側わん
B1 要経過観察 脊柱側わん症(軽度) コブ角15度~24度
構築性側わん
B2 脊柱側わん症の疑い コブ角14度以下
構築性変化のあるもの
C 要注意 構築性変化のないもの
D 正常 異常なし  
 

医療機関受診に際しての注意事項

  1. 側わん症判定(A、B1、B2、C、D)でA、B1の判定を受けた児童・生徒は、原則として第1群の医療機関を受診し、必要に応じて装具などを作成する。またフォローは専門医の判断により、第1群または第2群の医療機関で行うようにする。
  2. 医療機関受診の場合は、下部記載の「脊柱側わん症に対応する医療機関」の一覧表を参考にしたうえで、当日は脊柱管理手帳とX線フィルムを持参する。
 

脊柱側わん症発現率と性差

1:7ぐらいの比率で女子に多くみられます。

■5市1町(明石市、芦屋市、尼崎市、伊丹市、猪名川町、宝塚市)B2以上(平成24年度)

全体 男子 女子
受診者数
発現率
受診者数
発現率
受診者数
発現率
13,877名
2.23%
7,019名
0.54%
6,858名
3.95%
 

モアレ写真有所見率と性差

■神戸市(平成24年度)

全体 男子 女子
受診者数
発現率
受診者数
発現率
受診者数
発現率
13,457名
14.27%
6,808名
12.18%
6,469名
16.87%
 

脊柱側わん症・後わん症とは

身体を後ろからみたとき、脊柱が横に曲がったり傾いて、しかもねじれが起こったものを側わん変形、横からみて「猫背」のように曲がっているものを後わん変形といいます。その傾きや曲がりが極度に強くなったものや、また元にもどらなくなったものを側わん症および後わん症といい、注意しなくてはなりません。

正常例
側わん症例

財団法人予防医学事業中央会発行
HEALTH CARE No51より転載

 

側わん症の原因

側わん症は、原因がはっきりわかっているものと、まだ原因のわからないものとがありますが、わが国で、最も多いものは、原因不明の特発性側わん症で、側わん症の約80%を占めます。特発性とはまだ原因が解明されていないという意味です。また強い遺伝性はないのですが、家族内発生例は多くみられます。

 

特発性側わん症とは

これは、10~15歳頃の成長の最も著しい思春期の子供、とくに初潮前後の女子に多くみられ、またこの時期にわん曲が強くなり、成長期を過ぎる17~18歳頃にはわん曲の進行も止まるとされています。自覚症状が乏しく家庭でも見過ごされるため、学校検診で見つかることが多いようです。

側わん症例

財団法人予防医学事業中央会発行
HEALTH CARE No51より転載

 

特発性側わん症の症状

わん曲が強くなれば、心肺機能の低下や内臓器への影響が現れ、成人になると背部に痛みを引き起こすこともあります。肋骨の変形のため背部に隆起ができたようにふくれ、左右のウエストラインが対称的でなくなり、高度になると一見してわかるようになります。

側わん症例

財団法人予防医学事業中央会発行
HEALTH CARE No51より転載

 

側わん症の程度

わん曲の程度は、コブ法という方法で測定します。その測定角度が25度~30度以上になると、外からはっきりとわかります。そのため、25度前後より治療が必要となります。

側わん症例
 

側わん症・後わん症の治療

特発性側わん症の治療法は、X線写真での脊柱のわん曲(コブ角)の程度やカーブパターンと発育の程度(骨成熟度)により総合的に判断されます。コブ角25度未満は3ヵ月毎の経過観察、25~40度では装具療法が必要で季節休暇毎の観察、50~60度以上は手術療法の適応となります。装具療法は進行の防止を目的とした唯一有効な保存的治療法であります。側わんのカーブパターンにより種々の装具が用いられ、同時に体幹筋や呼吸器筋の体操療法も積極的に取り入れます。また学童期には思春期後わん症もかなり多く、同じような病状を起こしますから側わん症と同じ注意が必要となります。

 

側わん症治療を受ける際に知っておきたいポイント

軽度~中等度(コブ角30度前後)のわん曲は、病気というよりむしろ骨格の特徴と理解すべきで、「背が高い低い」とか「歯ならびが悪い」と同じと考えてください。遺伝性があるのも骨格の特徴と考えれば、親に似るのはむしろ当然です。ただしわん曲が進行していくと、いろいろな問題が生じてきます。そうならないためには、成長終了まで専門医による経過観察を受け、場合によっては装具療法が必要になります。

装具療法は科学的に証明された唯一有効な保存的療法であり、成長時期の側わんの進行を抑止することが目的です。一方民間療法(マッサージ・整体など)は、その有効性が科学的に証明されていません。

治療は長期間にわたるため子供も親も大変ですが、根気よく専門医の正しい指導と治療を続ける必要があります。

 

側わん症の予防

原因が不明ですから、予防することは難しいです。日頃の「姿勢の悪さ」や「カバンの重さ」などが原因で背中が曲がると考えられがちですが、医学的な根拠はありません。経験的には痩せ型で「ひょろっとした体型」に多く見られることから、偏食をなくし、水泳などの全身運動で腹背筋や体幹支持筋の筋力などをバランスよくつけることをお勧めします。

 

特発性側わん症の種類

  1. 乳幼児期側わん症(0~3歳)
  2. 学童期側わん症 (3~9歳)
  3. 思春期側わん症 (10歳以上)
 

側わん症の治療

  1. 高度例における心肺機能障害の予防
  2. 変形に対する美容的な悩みの予防
  3. 腰背痛や神経症状発現の可能性の予防
  4. 保存的治療は成長期でのみ可能である
  5. 早期治療でほとんどの例は進行防止が可能
  6. 発現率は比較的高い
  7. 発見方法は比較的簡単である
 
 

 

検診体制

脊柱側わん症検診体制

兵庫県予防医学協会脊柱変形専門委員会

委員長 神戸医療センター名誉院長 宇野 耕吉
副委員長 宝塚市立病院副院長 森山 徳秀
委員 神戸大学整形外科教授 黒田 良祐
委員 神戸大学整形外科特命准教授 角谷 賢一朗
委員 兵庫医科大学整形外科主任教授 橘 俊哉
委員 兵庫医科大学整形外科准教授 圓尾 圭史
委員 兵庫医科大学整形外科講師 有住 文博
委員 兵庫医科大学整形外科助教 木島 和也
委員 きむらたくや整形外科クリニック院長 木村 琢也
委員 県立こども病院副院長 薩摩 眞一
委員 神戸医療センターリハビリテーション科部長 鈴木 哲平
委員 神戸医療センター整形外科医員 伊藤 雅明
委員 兵庫県予防医学協会健診運営部臨床検査科科長補佐 猪鼻 邦彦
 

兵庫側わん症センター

専門委員会委員が幹事を兼任

 

兵庫県下の脊柱側わん症検診システム

側わん症例
 
 

 

側わん症体操

 

この体操は、脊柱支持筋(腹筋・背筋)の筋力強化、体幹の柔軟性の保持や脊柱の可動性の増強に役に立ちます。また、この体操は毎日続けることが大切です。

 

1.脊柱を柔軟にする体操

正常例
側わん症例
基本姿勢
足首を立てる
 
 
  1. 脊柱の曲がり部(凸側)に手をあて、押さえながら、その方向にゆっくりと10回曲げる。
  2. ・両膝を伸ばし、足首を立てて図のように座り、上半身を前に倒し両手が足指にとどくよう
    にする。(胸を膝につけるように)
    ・息をとめずまた反動をつけずに足指にふれた状態で10秒間止める。
    ・動作はゆっくりする。
    ・両手が足指にとどかない場合は、膝を曲げてもよい。
    ・10回くり返す。
 

2.腹筋を強くする体操

正常例
・あお向けになり両膝をほぼ直角に曲げて、
両手をあごにつけた姿勢からゆっくり上半身を
図の位置(45°ぐらい)までおこして10秒間
止める。
・ゆっくりもとにもどす。
・息はとめない。
・10回くり返す。
※起き上がりができないときは、足首を押さえて
もらうか、固定する。
両手は胸の前で組んでよい
 

3.背筋を強くする体操

正常例
顔をあげない
 
 

うつぶせに寝た状態から、両手、両足を同時に上げ上体を反らす。あまり高く上げないようにし、動作はゆっくりと行う。
10~15秒止め、10回行う。

 

4.ペルビィック ヒッチ(骨盤の引き上げ)

正常例
正常例
正常例
1.自然に座る
2.左のおしり側を椅子
から離し拳上する
3.上体に力を入れたまま、ゆっくりと左のおしりを椅子に接着させ、骨盤の線を水平にする。
(30秒保持)
 
 

この体操は全身が映る鏡の前で始めましょう。両肩の高さはできるだけ水平に保ってください。
・1回30秒の体操です。いつでもどこでもできる体操なので、1合計600回を目標にしてください。
・学校や家庭で、日常的に行う習慣をつけましょう。(授業開始前、授業開始後など)
・この体操療法をされる場合は、必ず専門医の指導を受けてから始めてください。

 

5.プル アウェイ体操

正常例
この図は胸椎右凸用です
 
 

脊柱の曲がり部(凸側)を指で指し示し、そこから離れるように、自主的に脊柱の曲がりを伸ばす体操。
動作はゆっくり10回行う。(胸椎左凸用は動作が反対になります。)
この体操療法をされる場合は、必ず専門医の指導を受けてから始めてください。

 

監修

兵庫側わん症センター
兵庫県予防医学協会脊柱変形専門委員会
公益財団法人 兵庫県予防医学協会

〒657-0846 神戸市灘区岩屋北町1丁目8-1
TEL (078)855-2711

 

 

医療機関一覧表

兵庫県下で脊柱側わん症に対応する医療機関 (PDF:2024年4月1日現在)

第Ⅰ群医療機関(脊柱側わん症の専門的治療を行います)

・B1以上の方は原則として第Ⅰ群の医療機関で受診して下さい。
・受診される場合、必ず出務日・時間・予約方法等を事前にご確認下さい。
・受診時には「脊柱管理手帳」及び「X線フィルム」を持参して下さい。
・フォローは専門医の判断により第Ⅰ群又は第Ⅱ群の医療機関でされます。
・装具等の作製は必要に応じて行われます。

医療機関名 住所 電話番号
神戸大学医学部附属病院
整形外科
神戸市中央区楠町7-5-2 078-382-5111
兵庫医科大学病院
整形外科
西宮市武庫川町1-1 0798-45-6180
神戸医療センター 神戸市須磨区西落合3-1 078-791-0111
兵庫県立こども病院 神戸市中央区港島南町1-6-7 078-945-7300
 

※診察時間・医師名などはこちらのPDFでご確認ください(2024年4月1日現在)。

 

第Ⅱ群医療機関(脊柱側わん症の診察・助言・指導を行います)

・B1以上の方は原則として第Ⅰ群の医療機関で受診して下さい。
・受診される場合、必ず出務日・時間・予約方法等を事前にご確認下さい。
・受診時には「脊柱管理手帳」及び「X線フィルム」を持参して下さい。
・フォローは専門医の判断により第Ⅰ群又は第Ⅱ群の医療機関でされます。
・装具等の作製は必要に応じて行われます。

地域 医療機関名 住所 電話番号
阪神 県立尼崎総合医療センター 尼崎市東難波町2-17-77 06-6480-7000
吉良整形外科 尼崎市杭瀬北新町1-10-2 06-6481-3073
武部整形外科リハビリテーション 尼崎市浜田町5-28 06-6413-2277
青木外科整形外科 尼崎市若王寺1-2-23 06-6491-0148
大塚整形外科 尼崎市塚口町3-25-1-101 06-6428-2381
きむらたくや整形外科クリニック 尼崎市水堂町1-3-1 06-6438-1205
県立西宮病院 西宮市六湛寺町13-9 0798-34-5151
明和病院 西宮市上鳴尾町4-31 0798-47-1767
吉岡整形クリニック 西宮市和上町6-6 0798-36-3360
サンクリニック 西宮市甲子園口3-3-33 0798-65-3600
宝塚市立病院 宝塚市小浜4-5-1 0797-87-1161
宝塚まるお整形外科 宝塚市小林5-4-39 0797-77-0231
橋本整形外科 川西市多田桜木1-2-15 0727-92-4566
中村整形外科リハビリクリニック 川西市美山台3-3-2 0727-95-2711
三田市民病院 三田市けやき台3-1-1 0795-65-8000
神戸 飯尾整形外科クリニック 神戸市灘区篠原本町1-7-19アーバンヴィレッジ篠原本町1階 078-881-9300
甲南医療センター 神戸市東灘区鴨子ケ原1-5-16 078-851-2161
神戸労災病院 神戸市中央区籠池通4-1-23 078-231-5901
済生会兵庫県病院 神戸市北区藤原台中町5-1-1 078-987-2222
六甲アイランド甲南病院 神戸市東灘区向洋町中2-11 078-858-1111
向井整形外科 神戸市西区大津和3-6-4-201 078-974-8807
東播 北播磨総合医療センター 小野市市場町926-250 0794-88-8800
中谷整形外科病院 加古川市平岡町新在家105 0794-26-3000
横山整形外科 加古川市加古川町備後71-1 0794-21-6998
山本整形外科リウマチクリニック 加古川市加古川町寺家町90-2 0794-23-1411
県立加古川医療センター 加古川市神野町神野203番地 0794-23-0001
坂田整形外科リハビリテーション 加西市平岡町中野484-1 0794-30-2780
順心病院 加古川市別府町別府865-1 079-437-3555
市立加西病院 加西市北条町横尾1-13 0790-42-2200
坂部整形外科 加西市北条町西高室字小沢533-1 0790-43-1444
西播 姫路聖マリア病院 姫路市仁豊野650 079-264-2001
兵庫県立はりま姫路総合医療センター 姫路市神屋町3丁目264番地 079-289-5080
姫路赤十字病院 姫路市下手野1丁目12番1号 079-294-2251
信原病院 たつの市揖西町土師720 0791-66-0981
公立神崎総合病院 神河町粟賀町385 0790-32-1331
淡路 県立淡路医療センター 洲本市塩屋1-1-137 0799-22-1200
 

※診察時間・医師名などはこちらのPDFでご確認ください(2024年4月1日現在)。

(注)判定区分のB1以上は原則として第1群の医療機関で受診し、必要に応じて装具などが作製されます。
また、フォローは専門医の判断により第1群または第2群の医療機関で行われます。
※専門医受診の場合、必ず外来日・時間・予約などを事前に電話確認したうえで、当日は脊柱管理手帳及びX線フィルムを持参して受診下さい。

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